化研

除染関連業務

原子力発電所

平成23年3月11日、日本周辺における観測史上最大の「東北地方太平洋沖地震」の発生により、原子力発電所から事故で大量の放射性物質が放出されました。
現在、発電所内では燃料デブリの取り出しや40年かかると言われている廃炉が進められています。化研では放射線量が高いエリアでの作業(除染や内部調査、取出し)を遠隔技術やイメージングなど、除染に関する技術開発や提携を行っております。

■高ガンマ線環境モニタリングのための3Dレンジングおよびイメージング技術の応用

ENEA(イタリア共和国経済振興省・新技術エネルギー環境局)で開発された「LARUNAセンサー」は、最新の3Dレーザープロファイラー技術で、1MGyまでの耐放射線性があるため、原子炉容器や貯蔵プールの中で操作することが可能です。水中及び高線量環境において輝度画像と3D形状モデルを同時にセンシングできる、強烈な放射線への露出を最小化し、オリジナルな振幅変調技術採用によりパフォーマンスを最適化できる、簡便にリアルタイムデータを可視化できる等の特長があります。 振幅変調技術はフランスの主な原子力操作エンジニアリングコンサルタント「Nucletudes」と共同で開発しました。

電子モジュール

技術スキーム

電子モジュール

電子モジュール

オプティカルモジュール

オプティカルモジュール

システム構成

1)オプティカルモジュール
耐圧密閉容器に耐放射線光学系である光ファイバー、スキャニングミラー、ミラー用モーター、光学窓を備えています。

2)電子モジュール
オペレータの安全を確保するため、電子モジュールは汚染されていない場所または低放射線域に設置しています。
レーザー、検出器、信号取得と電子制御ユニット、データ処理とイメージングのためのソフトウェアを備えています。
仕  様
項目 現状 現在開発中
レーザー測定範囲 1〜10 m 1〜20 m
空間分解能 0.5-1mm  
レンジ誤差 1mm
脱塩水同等環境、積分時間 : 3〜10ms
 
走査角度 30°  
電子モジュール~
オプティカルモジュール距離
最大10 m 最大60 m
オプティカルモジュール潜水深さ 1〜10 m  
オプティカルモジュールの寸法と重量 直径 35 cmx70 cm 、35 kg  
ガンマ線耐性 1 MGy 2 MGy
レーザー波長 515 nm  

アプリケーション

LARUNAセンサーの性能確認を2016年4月にイタリアにあるENEA-Casaccia研究所のTRIGA-RC1原子炉容器で行いました。
ENEAのTRIGA-RC1原子炉容器 仕様
電力 1MW
燃料 ウラン - ZrH合金(8.5%Wt U)
濃縮率 20%235U
減速材 H2O、ZrH
クーラント 水冷 (脱塩水(自然対流))
原子炉

ENEA-Casaccia研究所 TRIGA-RC1原子炉容器

容器の底部に位置した燃料棒(レーザセンサから7mの距離)の鮮明な3D画像と輝度画像を得られました。
LARUNAセンサーは、今後原子力施設でのモニタリングに活用可能なオリジナル機器として活躍が期待されています。
輝度画像

撮影した原子炉容器の輝度画像

試験の様子

原子炉容器で行った試験の様子

 

■レーザー誘起ブレークダウン分光[LIBS]を用いた遠隔測定及び液体サンプル分析の概要

LIBSとは

レーザー誘起ブレークダウン分光法(Laser Induced Breakdown Spectroscopy「LIBS」)は、軽元素(H, He, Li, Be, B, C, N, O, F, Ne, Na・・・)〜重金属までを同時に測定することが可能です。試料の前処理が不要で、あらゆる状態(固体・液体・気体)のサンプルを、任意の雰囲気中で元素分析できる技術です。弊社ではApplied Photonics Ltd製のLIBSを用い、定量分析機能の最適化について開発を進めています。
LIBS構成

システム構成図  Applied Photonics Ltdホームページより引用

原理:
高エネルギーレーザーをサンプルに照射すると微量(ng以下)のサンプルが高温プラズマを生成します。高温プラズマにより励起された原子やイオンの電子が基底状態に戻る際に特性周波数の光を放射します。この発光が光ファイバーによって収集されて分光器に送られ、各元素に特有のスペクトルが検出されます。
LIBSCAN_photo

Applied Photonics Ltd製のLIBSCAN100システム

同位体測定への応用

高分解能分光器を備えたLIBSでは同位体測定も可能です。活用分野として核鑑識法(核物質捜査特定法)のU、Pu等の同位体測定や核融合ではLI同位体測定等があります。 同位体測定と遠隔測定の機能を組み合わせることで、原子力分野の有能な分析手法となります。
輝度画像

Smith et al. Spectrosc. Acta Pt. B-Atom. Spectr
2002, 57, 929–937 (出典)

試験の様子

Cremers et al. Spectrosc. Applied Spectroscopy
2012, 66(3), 250-261 (出典)

遠隔操作による測定

遠隔操作

ホットセル内遠隔測定  Applied Photonics Ltdホームページより引用

ロボットや延長光ケーブルを使いLIBSを遠隔操作することことで、ターゲットからの距離を保ちながら非破壊で迅速な多元素同時分析が可能です。安全な場所から原子炉内構造物やホットセル内に存在する高線量試験片などの元素情報が取得できるLIBSは、デコミッショニングや原発事故等の調査業務に最適なツールです。